父が死んだ数日後、祖母が亡くなった。祖母名義のボロ家を誰か欲しがる人はいるのか?と思っていたが、案の定相続権のある親族全員が「いらない」と言う事で、ボロ家を引き継ぐ人がいなかった。
現金はほとんど残ってないし、相続放棄すれば話は早いのだが、実は母が住んでいる家の土地も祖母名義だったため、母を今の家に住まわせるには祖母の遺産を誰かが相続しなければならなかった。
誰も相続したがらない負動産
まあ結局、しぶしぶ、嫌々ながら私が相続することになったのだが、悪い予感ほど当たってしまうものである。現地を見て私は絶句した…
祖母の残した家はもう何年も空き家になっており、山林と隣接している関係で竹・木・草・蔦がボーボーに生い茂って、まさにジャングルと呼ぶのに相応しい状態だったのだ。
私は相続してしまったからには、どうにか活用できないか?そう思い竹を切り、木を切り、草を刈り、本来の姿に戻してやろうと悪戦苦闘し、その結果体を壊してしまった。
そもそも私が住んでいるのは2つ隣の県であり、作業に来れるのは数ヶ月に1回と言う頻度で、綺麗に草を刈っても、次に来た時には元通りになっていて、そして綺麗にした所で使いみちも無いのである。
家は修繕しなければ住むには厳しい状況で、リフォームすれば金がかかる。金をかけてリフォームしたところで駅から遠すぎて、ド田舎すぎて、住みたいと言う人はいないだろう。
取り壊すにしても金がかかる。市の補助金が出るかも知れないが、そうは言っても全額が補助されるわけじゃないし、そもそも家を壊した所で、その土地どうすんの?って話。
かと言って知らん顔して放置していれば固定資産税が永遠と課税されると言う地獄のような状態だった。
どんな土地でも買います!と言う広告
そんなある日、母がソーラー発電業者の「どんな土地でも買います!」と言うチラシを見つけ、私は藁をも掴む気持ちでその業者に電話をかけた。
業者は「じゃあ現地を確認してまた折り返します」と言う事で、母は「百万くらいで買い取ってくれんかなー」などと呑気な事を言っていた。そんな馬鹿な話が…と思っていたが、ひょっとしてと期待もあった…
しばらく待っていると、業者からは電話ではなく、ショートメールで「買取できません」と無慈悲な返信があった。
え?日当たり良いのに?タダなら引き取るよとか、いくらか払えば引き取ってやるよとかでもなく、完全な拒否だった。
クソっ!どんな土地でもって大嘘じゃないかよ!
このあたりで私の心はもうポキポキと音を立てて折れ始めていて、どうにか有効活用できないか色んな可能性を模索した。しかし、なんと言っても交通の便が悪すぎるし、何をするにも金が無い!
ソーラー発電業者ですらいらないと言う土地を、一体誰が欲しがると言うのか?私は絶望感を感じていた。
わりと初期の段階から「みんなの0円物件」と言うサイトがある事は知っていたんだけど、これも結局ダメなんじゃない?北海道とかの観光地とか関東とかなら需要があるかもだけど、ここド田舎県ド田舎市だよ?
そんなわけで最初はあんまり期待してなかったんだけど、まあマッチングが成立しなければ費用はかからないし、今後私が死ぬまで払い続ける固定資産税の金額を思えば、成功報酬の16万円(当時)は安いと思えた。
ここからは私が「みんなの0円物件」を利用した実際の体験談となってます。私の経験から気をつけるべき落とし穴と、成約率を上げるために気をつけるポイントなども伝授したいと思います。
いざ!みんなの0円物件へ!
みんなの0円物件のサイト上には「こんな不動産でも貰い手がみつかるなんて!」みたいな体験談が載ってるが、その当時の荒みきった私の心は「ケッ!本当かよ!」なんて思ったりもした。
内心、そうは言ってもうちのボロ家よりマシなんだろーなー!なんて思ってて、実際掲載されている物件を見ると、うちより酷い物件もあるが、早々にマッチングが成立するのはマシな物件ばかりだった。
ただ、他にどうしようも無いから申し込みフォームから申し込みを済ませ、草刈りの時に撮っておいた写真を登録したりして完了。
登録自体は難しくも何ともなく、必要事項を淡々と埋めて行くだけ。私が選んだのは「おまかせプラン」の方で、候補者の方とのある程度のやり取りと、マッチングしたら司法書士を派遣してくれるプラン。
最初の候補者…しかし…
意外とすぐに貰い手が見つかったりしてー!なんて甘く考えていたけど、そう話は簡単じゃなかった、待てど暮せど連絡は無い…
おまかせプランなので、問い合わせが来てるのか来てないのか、それが表面上わからなかった。そこはちょっと改善して欲しいポイントだった。
まあそれでも待つしか無いので待っていたら、一人良さそうな候補者がいると連絡があり、なんでも結婚して子供ができるからDIYして住みたいとの事で、この時はちょっと嬉しかったのを覚えてる。
私は「じゃあその人でお願いします」と返信して、あとは話の進展を待っていたんだけど、なかなか返事が来ない…
結局その人は連絡がつかないとかで話が流れてしまった。その本人はDIYやる気満々だったかも知れないが、休日に奥さんと現地を見に行ったのかも知れない、奥さんが「こんな所住めるか!」と怒ってる姿が私には目に浮かぶようだった…
これは糠喜びになってしまい、ちょっと安心した分、余計に落胆してしまう。これはこのサービスの落とし穴の1つだと言えるだろう。
糠喜びからの…
そして、そこからまたしばらく音沙汰は無かった。
なーんだ、やっぱりダメじゃん。私はもう諦めて、父の残した安物の草刈り機がエンジンがかからないので、新品の草刈り機を買って、しぶしぶ、嫌々ながら草刈りをしている、その時だった!
みんなの0円物件の担当者から連絡があり、次点の候補者がいるとの事で、わりと近所に住む人で、花畑にしたいと言っている人だった。今度こそは!今度こそは頼むぞ!
しかも私にとっても花畑にすると言うのは安心材料だった。と言うのもそのエリアは過疎化も急激に進み、普通に畑に作物を植えてもイノシシとシカに根こそぎ食われてしまうので、花の方が良いと思えた。
私にとってはお荷物とも言える土地だが、せっかく貰ってくれる人には有効活用して欲しいし、喜んで欲しい。
そこからは話はトントン拍子に進んで、司法書士の先生を間に挟んで書類にサインと押印して終わり。
全てが終わっての感想
手続き完了の連絡を受けた時には、胸のつかえが取れたと言うか、本当に嬉しかった。やっと解放されたと安心したのを覚えてます。
相手が見つかるまでの間は、自分よりも後に掲載された物件が、次々に成約して行くのを横目に見ながら、本当に気持ちが焦ってました。
お世話になった後もちょくちょくサイトをチェックしていて、私の成功事例に続き、同じ市の物件が何件も登録されていました。そして、同じように成約して行きました。
他県の事例も見たりするんですが、こんな物件誰が欲しがるんだよ!と言いたくなるような物件でも、意外とマッチングしてるんですよ。
ただ、農地だけは例外で、農地は譲り受けた後にちゃんと耕作できる人じゃないと農業委員会の許可が出ません。なので近隣に住む人じゃないと対象にならないため、農地だけは少しハードルが高いようです。
私には無い感覚なんですが、世の中には0円ならとりあえず貰っておこう…という考え方の人も一定数いるようで、かなり厳しそうな条件の物件でもマッチングが成立してます。
私が感じたマッチングの成約率を高めるコツですが、掲載する写真が結構重要だなと思いましたね。
画質が悪くて、薄暗くて、枚数も少ない…なんて物件だと、うーん…ちょっとよくわからないから止めておこう…となりやすいです。
0円物件に掲載されるような物件なので、魅力が乏しい物件だと言うのは承知の上で皆見てるはずですが、とは言え、その中でもいかに魅力的に感じてもらえるか?ある程度の工夫や努力はしたいですね。
私も竹を切って草を刈り、出来ないなりに、足りてないなりに手入れをして、見た人に気に入ってもらえるよう努力はしました。
見てる人に「なんか良さげだな…」と第一印象で感じてもらわないと、そもそも検討のテーブルにすら載せてもらえないかも知れませんからね。
もちろん、対象地から遠方に住んでるとか、体が悪くて何もできないとか、綺麗にする体力やお金もない…そんな人もいるでしょうから、無理はする必要ありませんが、明るい晴れた日の昼間に写真を沢山とって、物件の良さを伝える事ができたら、自ずと成約率も違って来るのではと感じました。
以上が私の0円物件体験記なのですが、私は0円物件を利用して本当に良かったと思いました。マッチングが成立するまでは不安ですが、あなたの負動産が無事に貰い手が見つかる事を祈っております!
ちなみに料金ですが、Webサイトに書いていた通り成約した時にだけ16万円程度(当時、最近値上がりした)のポッキリ価格で、それ以外になんやかんや理屈をつけて課金する…なんて事はまったくありませんでした。
最後にとても参考になる本を1冊紹介します。共感と参考になる実際の体験談で語られる内容に、私も一気に読んでしまいました。
私の実家が売れません!
https://amzn.to/46P59UR