相続放棄した土地の管理責任について調べてみた

自分の先祖が残した土地・不動産、これが資産価値や利用価値のあるものなら何の問題も無いのだが、例えば故人に大きな借金があったり、遠方に住んでいて相続しても管理ができそうになかったり、そもそも価値が無いので相続したくない場合もある。

そこで、そもそも相続人ではなかった事になる相続放棄という手続きがあるのだが、この制度にはちょっと気になる部分がある。

【民法940条1項】相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

この部分なんだけど、要するに相続放棄の手続きが完了したとしても、即座に無関係になるわけではなく、バトンタッチを見届けるまでは土地や家の状態をキープするように努めなければならないと言う事らしい。

しかし、一方で相続放棄が認められないケースの中に「相続対象の固定資産を改修した」ために相続する意思があるとみなされて相続放棄が認められなかった事があるらしい。

結局じゃあ管理って何をすりゃあ良いのよ?って話なんだけど、改修すらダメならもうこんなん見守る以外の何も出来なくないっすか?

あと、相続放棄する人に注意して欲しいのは遺産分割協議に参加した事も相続の意思があると判断されるようで、相続放棄したけど身内なのでただその場に居合わせただけ…だったとしても、これを参加したと主張する人がいると、ややこしくなりそう。

この管理義務は国からの通達では以下のようになっている。

相続放棄者は相続財産である空き家を管理する義務を負うが、この義務は後に相続にとなる者等に対する義務であり、地域住民などの第三者に対する義務ではないとされている。
国土交通省住宅局 住宅総合整備課 平成27年12月25日『「空家等対策の推進に関する特別措置法」に関する御質問について』より引用

つまり、もともと故人が亡くなった時点でお化け屋敷みたいな景観だった家があったとして、それをその状態でキープするのは、相続放棄したとしても、ちゃんと相続人が管理を始めるまでは責任を負う。

しかし、隣近所から「無人でお化け屋敷みたいな景観で気持ち悪いから早く取り壊せ!」みたいな事を言われたとしても、そりゃ相続放棄した人の責任じゃないよって事だろう。

それから2023年に相続に関する法律が改正される。

【改正 民法940条1項】相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

この記事の序盤で引用した条文と比較すると、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときはと言う一文が追加されている。

要するに故人が亡くなった時に、その故人名義の家に住んでいるとか、故人名義の土地で農業してるとか、そういう時はちゃんと管理しろよなって事だろう。

つまり、住んだり利用していないものに関しては管理義務は無いと読める。これは法律が現実に歩み寄ったという形なのかも知れない。

この条文に関して「では元々誰も住んでいない家はどうなる!」みたいな声があるけど、それって多分今までだって別に誰も特別の管理なんてしてなくて、ただ静かに放置されてただけだと思うから、法改正されても現実は何も変わらないと思うんだよね。

ご存知のように日本は人口が減っている。しかも年寄りが増えて若者が少ない。それでいて日本の土地の総面積は同じであり、地形も短期間で大きくは変わらない。

つまり1人あたりの管理しなければならない面積は増える一方で、高齢化に伴う社会保障制度のコストが増え、国民負担率はいまや50%に迫る勢いであり、そんなところに先祖の残したわけわからん遠方の土地を管理しろと言っても無理難題すぎるでしょ。

利用価値が無い土地はどんどん国が積極的に引き取って、合筆・整地・造成・区画整理など個人レベルでは難しい価値アップ策を施して、それを民間に利活用してもらい、税収を得る…というサイクルになれば良いのになと思うんだけどね。

追伸

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